2015年7月17日金曜日

部屋のセミ




先日、あるカメラの充電器が見当たらなくなって、ベッドの下などをライトで照らしてくまなく探した。結局、充電器は箱に入れて別の場所で見つかり、とりあえずでめでたしめでたし、だったのだが……。

それとは別に、思わぬものを発見した。

ベッドの下の奥の方にセミ(!)がいたのである。普通にとまっているようにも見える……。いや、季節的にあれは、あの姿のまま死んでいる。

ライトに浮かび上がったセミ。ベッドの奥の方に「ある」から手は届かない。さて、掃除機で吸ってしまうか、それともベットを動かして手でつまみ上げるか……。

判断に迷った。

昔、旅行先の浴場で起きたことを思い出した。

僕はそこで、僕は若い女の子と裸で向き合っていた。そういう商売の店に行ったわけではない。

そこは大浴場で、日ごとに男湯と女湯がかわるのだが、彼女は男湯と女湯を間違えたまま脱衣し、さあさっぱりしようとドアを開けたそのとき、向こう側に僕が素っ裸で立っていた、というわけだ。

手に持っていたのはふたりともタオル1枚だけ。

おっ。胸の膨らみが豊かだな。

そう思ったかどうかは記憶にない。ただ次の瞬間、僕はその目の前で展開された出来事を、なぜか「見なかった」ことにした。見なかったことにして、右向け右をして僕は浴槽の方に移動した。その後、彼女がどうしたかは知らない。

そのときの様子を見た人がいたとしたら、僕は間違いなく「何も見なかった」ように見えたのではないか。

さて、話がそれたが、ベッドの下のセミだ。このときも同じことが起きた。

僕はやはり、そのセミを見なかったことにした。今、それがどうなっているかは、ここで書くのはやめておこう。

さて、話は大浴場に戻る。

タオル1枚しか持っていないとき、女の人も下を隠すのだということを、二十歳を少し過ぎたばかりの男はその大浴場で学んだ。

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